下肢静脈瘤とは
下肢の静脈が太く浮きでているものを「下肢静脈瘤」といいます。3つのタイプがあり、最も多いのが伏在系静脈瘤で最も太いタイプで、やや細いタイプが側枝静脈瘤、また網目状やクモの巣状静脈瘤といった最も細いタイプがあります。
伏在静脈瘤
症状、できやすい人、
どうしてできるのか
全く症状のない人もいますが、むくむ、だるい、ほてる、こむら返り、ひどくなると色素沈着や潰瘍ができます。同時に美容的な悩みの原因にもなります。できやすい危険因子として女性、年齢とともに頻度が高くなる、親兄弟にある人におこりやすい、妊娠・分娩をきっかけになりやすい(特に2度目以降)、また立ち仕事(美容師、調理師、店員など)に従事する人に多く、進行しやすいといわれています。血液が心臓に戻ることを「静脈還流」といいますが、重力で戻らないよう「弁」で防いでいます。多くの静脈瘤は、表在静脈(とくに大伏在静脈や小伏在静脈)の弁が壊れるために発生します。
治療法は?
現在よく行われている治療法は4つです。つまり圧迫療法(弾性ストッキング、弾性包帯など)、ストリッピング手術・高位結紮(大伏在静脈あるいは小伏在静脈を引き抜く、または静脈をしばる)、硬化療法(直接静脈瘤に硬化剤を注射する)、レーザーやラジオ波による血管内治療(ストリッピング手術や結紮術のかわりに、膝のあたりから伏在静脈にカテーテルを挿入し、カテーテルの先端からレーザーや高周波を照射し、血管の中から伏在静脈を焼灼、閉塞させる治療法)です。病気の程度に加えて患者さんの家庭や職場環境も考慮して治療法を決めています。しかし、下肢静脈瘤は必ずしも治療しなければいけない病気ではありませんので、説明後に治療を受けるかどうかは患者さんが決めればよいと考えています。
深部静脈血栓症とは
下肢の深い静脈に血栓が形成される状態です。発症すると急激な下肢の腫れ、痛み、発赤を伴います。長時間の座位や寝たきり、悪性腫瘍、手術後、外傷後などが危険因子です。血栓が肺に飛ぶと肺塞栓といって稀に命にかかわることがあります。
深部静脈血栓症(外傷後)
治療法は?
治療には、抗凝固療法(血液を凝固しにくくする薬)、血栓吸引療法、下大静脈フィルターの挿入などがあります。治療法は患者さんの状態や症状の重さによって異なります。早期に受診いただき、治療を開始することが重要と考えています。
リンパ浮腫とは
熱感、疼痛を伴わない、白色を呈する上下肢の腫脹が主症状です。乳がんや子宮がんの手術後の人が大部分ですが、一次性リンパ浮腫の患者さんもおられます。むくみ(浮腫)の原因にはいろいろな病気があります。
続発性リンパ浮腫(子宮がん術後)
むくみ(浮腫)の原因は?
放置していると?
原因にはいろいろな病気があります。
続発性 リンパ浮腫 |
リンパ節切除を伴うがんの手術後や放射線治療後 抗がん剤治療でリンパの流れが悪くなることで起こる浮腫 |
---|---|
原発性 リンパ浮腫 |
原因がはっきりとわからない浮腫 |
静脈性 リンパ浮腫 |
下肢静脈瘤、深部静脈血栓症などの静脈の病気が原因で起こる浮腫 |
廃用性浮腫 | 下肢の運動不足で起こる浮腫 |
その他 | 心臓や腎臓、甲状腺などの内科的な病気が原因で起こる浮腫 |
むくみを放置していると、ひどくなり皮膚から液(リンパ)が染み出したり、炎症が起きる(蜂窩織炎)ことがあります。むくみが気になる場合は、早めに専門医による診察を受け、原因に合わせた治療を始めることが望まれます。
治療法は?
「複合的理学療法」に日常生活指導を加えた「複合的治療」が標準とされています。①スキンケア ②用手的ドレナージ ③圧迫療法 ④圧迫下運動療法が基本です。当院では医師の診断後、弾性ストッキングなどの着脱指導を行います。当院にはリンパ浮腫セラピストの資格を有する看護師が在籍しています。リンパ浮腫の治療は継続していくことが重要です。患者さん自身がセルフケアを習得できるように医師の指示のもとで適切な対処法を学び、症状が改善できるよう援助しています。