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研究の概要
研究の内容
基礎的研究
1.血行再建術後晩期閉塞機序とその制御に関する研究2.血管内膜肥厚に対する遺伝子治療、薬物療法に関する研究
3.重症虚血肢に対する治療的血管新生療法に関する研究(細胞移植療法と遺伝子治療)
4.大血管手術時の腸管虚血の評価に関する研究
5.動脈瘤の成因に関する研究
6.実験的大動脈瘤モデルの作製
7.人工血管感染防御に関する研究
8.イオントフォレーシスを用いた血管疾患の治療に関する研究
臨床的研究
1.重症虚血肢に対する治療的血管新生療法に関する研究(細胞移植療法と遺伝子治療)2.血行再建術後晩期閉塞機序とその制御に関する研究
3.ステントグラフト治療の遠隔期成績改善およびその適応拡大に関する研究
4.胸腹部大動脈瘤に対する低侵襲治療
5.バージャー病、血管炎の病理
6.開存率向上ならびに血管内膜肥厚抑制に対する薬物療法の確立および遺伝子治
7.血管疾患の無侵襲診断法に関する研究
※臨床的研究以外は修正なし
研究の概要
慢性虚血肢に対する侵襲治療(バイパス手術、血管内治療)において、バイパスあるいはステントの再狭窄あるいは閉塞の機序の解明および、その予防がわれわれ血管外科医の解決すべき大きな問題点である。我々はその成績向上のために、血管内膜肥厚の制御と血行再建術が困難な重症虚血肢に対する新しい治療戦略としての治療的血管新生療法(細胞移植療法と遺伝子治療)の確立をめざして、基礎的研究から臨床研究へ、トランスレーショナルリサーチをおこなっている。
血管内膜肥厚の制御
我々の研究の内、特筆すべきはPADに対する血行再建術の臨床成績と極めてよく相関するイヌおよびウサギ異常血流モデルを用いて実験を行ってきたことである。 我々はASO臨床例に極めて相関するウサギおよびイヌ異常血流モデルを開発し以下の知見を得た。1.異常血流条件下では自家静脈グラフト内膜肥厚が著明に増強されること
2.low shear stress下では、prostacyclin(PGI2)、Nitric Oxide(NO)の産生低下が認められ、特に静脈グラフトで顕著で動脈グラフトでは軽微かつ一過性である
3.高脂血症はグラフト内膜肥厚の増悪因子であること
自家静脈グラフトの再生内皮細胞の機能的異常をNOおよびPGI2を指標として明らかにし、この分野における先駆的業績を残した。さらに、我々はHVJ liposomeをベクターとして用い、ecNOS遺伝子導入により内膜肥厚抑制が可能であることを示した。また転写因子であるAP-1の活性化を阻害するおとり核酸医薬(decoy)をin vivoで血管壁に導入やMCP-1をターゲットとした坑炎症療法よる内膜肥厚抑制を報告した。
a. 遺伝子治療
近年は、腫瘍増殖活性,線溶系亢進能,血管新生能,細胞増殖能,細胞遊走能などをもつミッドカイン(MK)に注目しウサギMKを標的としたアンチセンスODNによるバルーン擦過モデル新生内膜の抑制効果(Am J Physiol 2005)、ならびにsiRNAを用いて自家静脈グラフト内膜肥厚抑制効果を確認した(J Vasc Surg, 2006)【図1,図2】。現在ステント最狭窄とMKとの関連を検討しており,その臨床応用をめざしている。
ウサギVein graft model

図1
28日目 静脈グラフト

図2 Banno H,Komori K et al. J Vasc Surg, 2006
b. 薬物療法
スタチン慢性投与により自家静脈グラフト内膜肥厚抑制効果を認めた。【図3】(J Vasc Surg, 2005)
Pravastatinによる内膜肥厚抑制効果
-ウサギ自家静脈グラフト4週後(elastica van Gieson's statin)

図3 Yamanouchi, Komori et al. J Vasc Surg, 2005
治療的血管新生療法
治療的血管新生療法として細胞移植療法と遺伝子治療を行っている。「骨髄単核球細胞移植」を名古屋大学附属病院にて7例7肢に施行し良好な結果を得た。また、この他にG-CSFで誘導した末梢単核球よりCD34陽性細胞を分離したものを、虚血部筋肉に注入するという独自の方法であり、初期成績では虚血性潰瘍の縮小などの有望な結果を得た経験がある(Lancet2002)。また一方、組み換えセンダイウイルスベクターを用いた、高効率に遺伝子を導入する新しい方法を開発し、さらにはFGFを虚血肢に導入し血流改善すること、内膜肥厚を抑制することを明らかにした(Am J Physiol 2003)【図4】。この実験結果をもとに九州大学消化器・総合外科と共同で臨床応用をめざしているところである。
FGFの自家静脈グラフト内膜肥厚抑制効果(ウサギ異常血流モデル)

図4 Shoji T, komori K et al. Am J Physiol 2003
最近では遺伝子治療と細胞移植療法のハイブリッド治療の併用効果をウサギ虚血モデルで得ることができた(Arterioscl Throm Vas, 2006循環器内科室原教授との共同研究)。
以上のように血管内膜肥厚の成因の解明と遺伝子導入によるその予防の基礎的研究、ならびに治療的血管新生療法として細胞移植療法、遺伝子治療に取り組み、血管病変に対する遺伝子治療を含めた新しい治療戦略の開発をすすめている。
バージャー病の成因について ―病理学的検討―
当教室におけるバージャー病(血栓閉塞性血管炎)に対する研究の歴史は古く初代齋藤真教授の時代までさかのぼる。最近では極めてまれな血管疾患になり、その患者数も激減しているが、その歴史的背景より比較的豊富なバージャー病罹患動脈標本を有しており、それらを使用し、いまだ原因不明なこの血管炎の発症機転を解明すべく病理組織学的に炎症浸潤細胞の同定と炎症の主座を解明し(J Vasc Surg 2000)、また近年のバージャー病患者の臨床病理学的な検討を行っている(Ann Vasc Surg 2006)。今後はバージャー病の発症原因に迫るべく病理組織学的、分子生物学的手法を用いさらなる研究を行っていく予定である。



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