下肢静脈瘤

下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤とは、足の静脈が膨らんで瘤(こぶ)状になる病気です。原因は下肢静脈瘤の原因の項目で詳しく解説していますが、足の血液が心臓に戻りづらくなって足の静脈が膨らんでしまった状態です。このためにだるさや、明け方に足がつるなど様々な症状が出てしまいます。

下肢静脈瘤の原因

静脈瘤は心臓へ戻るべき血液が静脈の弁が壊れてしまったために下肢へと逆流してしまうために起こります。
妊娠・出産後の女性や、立ち仕事(調理師、美容師、教師など) の方、家族に静脈瘤がある方などに多く発生します。

下肢静脈瘤の原因に関する詳細を知りたい方は『こちら』をご覧ください。

下肢静脈瘤の症状、予後

下肢静脈瘤の症状としては、下肢のだるさやむくみなどがあります。また明け方に足がつるというのも特徴的な症状です。静脈瘤の病気が進行すると、皮膚に色がついてしまったり(色素沈着)、足のくるぶしの上のところの皮膚が炎症を起こしたり(静脈うっ滞性皮膚炎)、重症の場合は皮膚に欠損(潰瘍)を形成してしまう(うっ滞性潰瘍)ため注意が必要です。
色素沈着
色素沈着
静脈うっ滞性皮膚炎
静脈うっ滞性皮膚炎
静脈うっ滞性潰瘍
静脈うっ滞性潰瘍

下肢静脈瘤の診断・検査法

下肢静脈瘤の診断には、問診、視診、エコー検査(写真下)、静脈造影検査、静脈機能検査などがあります。
中でも静脈エコー検査は無侵襲検査で痛みもなく有用な検査方法です。血管外科専門医のいる病院などで施行可能です。
また静脈造影検査や、機能検査は手術前など必要に応じて施行しています。

下肢静脈瘤の治療

下肢静脈瘤の治療は様々な方法がありますが、まずは侵襲のない方法として静脈を上から圧迫するために、弾力(弾性)ストッキング(写真下)を着用していただいています。

さらに程度や症状により手術療法などを必要とする場合があります。
具体的には
(1)静脈結紮術(高位結紮術)、静脈抜去術(ストリッピング術)、レーザー焼灼術など
(2)静脈瘤硬化療法、静脈瘤切除術など
があります。
上記の(1)、(2)の治療法を組み合わせて局所麻酔や全身麻酔下に治療を行っています。

下肢静脈瘤の治療法に関する詳細を知りたい方は『こちら』をご覧ください

静脈瘤の原因(詳細)

静脈は心臓から動脈を通って各臓器へと運ばれてきた血液を心臓へと返す役割があります。
下肢の血流は主に筋肉の下を通っている深いところにある静脈(深部静脈)と浅いところを通っている表面の静脈(表在静脈)を介して心臓へと戻っていきます。これらの静脈内には重力に逆らって血液を心臓へと戻すために逆流防止弁が備わっています。(図1、2)
下肢静脈瘤はこの逆流防止弁が壊れてしまうこと(弁不全)により静脈血が心臓へと戻らずに足へ戻ってきてしまい(逆流)、表面の静脈が膨らんで瘤(こぶ)状になる病気です。(図2)

図1
図1

図2
図2

静脈瘤治療の詳細

(1)静脈瘤の原因である逆流している静脈に対する治療

A)静脈結紮術(高位結紮術)(図3)
逆流している静脈を根元から縛って(結紮)、切断する方法
【利点】局所麻酔、外来で施行可能。
【欠点】再発が多い。

B)静脈抜去術(ストリッピング術)(図3)
逆流している静脈を抜き取ってしまう方法
【利点】根治的(再発が少ない)。
【欠点】侵襲(負担)がやや大きい。数日の入院が必要。

C)レーザー焼灼法   血管内レーザー焼灼法
逆流している静脈をレーザーなどを使ってつぶす(焼灼)方法
【利点】侵襲が少なく傷がつかない。
【欠点】再発が多い。保険が利かない。

(2)実際の静脈瘤に対する治療

A)静脈瘤硬化療法(図3)
静脈瘤の中に静脈を障害して固めてしまう薬剤(硬化剤)を注入する方法
【利点】傷がつかなく、美容的に優れている。
【欠点】皮膚の壊死、色素沈着がおこることがある。

B)静脈瘤切除術(図3)
実際に静脈瘤を切除する方法
【利点】根治的である。
【欠点】小さな傷が沢山できる。痛みを伴う。

図3
図3

下肢静脈瘤に対するレーザー治療

名古屋大学血管外科では下肢静脈瘤に対するレーザー焼灼術(保険適応となった2010年1月からは「波長980nm」、2022年からはより負担の少ない「波長1470nm」のレーザーによる治療)を行っております。

これまで主に行われている「ストリッピング手術」と比較して、術中・術後の疼痛や皮下出血などが少なく、適応となる症例に対して適切な方法で行えば治療効果(再発率)も大伏在静脈のストリッピング手術と少なくとも同等であることが複数の海外での比較試験の結果から報告されています。

治療の原理

我々の静脈には逆流を防止するために「弁」が付いています。しかし、加齢や妊娠・長時間の立ち仕事などにより、この「弁」が壊れてきてしまうと、立ったときに重力に引かれて血液が脚の方へ逆流してきてしまいます。このために脚の静脈が怒張するのが静脈瘤です。

下肢静脈瘤の発生パターンで一番多いのが、足首から膝・太ももの内側を通って脚の付け根へと至る「大伏在静脈」の弁の逆流によるものです。この静脈に逆流が生じると立ったときに脚の付け根から膝の下へと血液が逆流してきてしまい、典型的なパターンでは下腿に静脈瘤ができます。
治療のためには目立っている静脈瘤を取るのではなく、「大伏在静脈」の逆流を遮断する必要があります。
そのために現在まで「ストリッピング手術」が行われています。これは局所麻酔(場合によっては全身麻酔や腰椎麻酔)で、脚の付け根と膝の内側に切開を加えて大伏在静脈内にワイヤーを通し、原因となっている大伏在静脈を取り去ってしまう方法です。この手術は最も確実性が高く、再発率も低いのですが、手術後の内出血や疼痛がある程度あります。

レーザー焼灼術では、先端からレーザー光線のでるファイバーを膝の内側から脚の付け根に向かって大伏在静脈内に挿入します(このため、脚の付け根に切開を加える必要はありません)。静脈の内側からレーザーを照射し、静脈壁を損傷させます。これにより大伏在静脈が閉塞してしまうので、立っても血液が逆流して来なくなります。治療は局所麻酔で行い、治療時間は片脚で1時間半程度です。

当院での治療スケジュール

当院では「日帰り手術」は行っておりません。手術の前日(もしくは当日午前中)に入院していただき、翌日(あるいは入院日午後)にレーザー治療を施行します。手術翌日の午前中にエコー検査を行ってから退院です。2泊3日(当日入院の場合は1泊2日)の入院となります。
退院後は約一週間後に外来受診していただきます。その後も必要に応じて外来で経過観察を行います。

全ての下肢静脈瘤がレーザー治療の適応になるわけではありません

現時点では、レーザー治療は「大伏在静脈」の逆流が原因となっている下肢静脈瘤に治療の対象を限っております。「小伏在静脈」の逆流による症例も場合によってはレーザー治療を行います。
その他にも下肢静脈瘤の原因は種々存在しています。外来での検査で、まずはレーザー治療が相応しいかどうかを判断させていただきます。場合によっては従来からの手術方法や保存的治療(圧迫療法)をお勧めさせていただきます。

参考

株式会社インテグラル社:https://www.integralcorp.jp/medical

エコー装置(超音波)で伏在静脈を確認し、静脈内へとガイドワイヤーを進めます。
手術中の操作のほとんど全てをエコーで確認しながら行います。

レーザーで焼く伏在静脈の周囲に局所麻酔薬を充分に浸潤させます。
この操作もエコーで見ながら行います。

光ファイバーを伏在静脈内に挿入し、中からレーザーで焼灼します。
(写真の赤い光は照準用の可視光です。レーザーではありません。)

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